私の本当に欲しいもの

逃げている彼を追いかけているのは
どうしてだろうと思うときもある

好きで好きでしかたないのもある
自分の事を見て欲しいっていう 我が儘だってこともわかってる

たまに彼からもらう 優しい言葉とか
あたたかな手のひらが忘れられない っていうのもある

いつもいつも不安なんだよ
どこかで怪我をしているんじゃないか
どこかで命を落としてしまうんじゃないか
誰かに取られてしまうんじゃないかって

不安が私を駆り立てるんだよ
追いつけ 追いつけって 後から後から押してくる

だから私は 待たないよ
今はまだ 追いつけなくたって
あなたの背中を 見ているだけだっていい

結婚してって 言っているのは
あなたの中の私の存在が 少しでも大きくなりますように
何か 繋がりができますように
飛び去ってゆく彼が
私のことを忘れませんように
そう願ってやまないからかな
それはある意味 我が儘な独占欲
細くて細くて切れそうな 赤い糸でも
私は それをつかまえていたいの

でもね

私のところに 帰って来て欲しいなんて言わない
私にずっと繋がれて欲しい なんて言わない
だって そうなったら
あなたはあなたで無くなってしまうから


でも 神様 これだけは叶えて

彼がいつか 天に召されてゆく その一瞬を

その一瞬だけは 私にください

他の誰でもない

その一瞬だけは 私にください


それが 私の 本当に欲しいもの