瞳に映る

光景は、悲惨なものだった。
生命のかけらも。感じられないような世界。 暗雲は渦巻き、植物は枯れ果て……湖は干上がっている。
「………これは………思ったよりも深刻だ……」
自分が纏うマントを握り締めた。
この身を守る、このマントの布地を通してさえも、空気の温度の上昇を感じる。
乾いた空気は………。自分にとっても好都合だったが、それは相手にとっても同じなのだろう。

こちらの世界の異変は、自分の世界とのバランスも崩し始めていた。
序々に汚染されていく自分のいた世界。その異変に気づいたものは少なかった。
原因をいくら探してもわからなかった。音もなく、気配もなく、それはゆっくり
と広がる見えない染みのように広がっていた。


最後の最後に、自分の守るべき宝石に………答えを問うと……そこに映し出された光景が………今自分の目の前に広がる世界だった。
まさか、反する世界側が原因だとは………微塵にも。


生きている炎になめられ、蹂躙されてゆく世界。

その中にきらりと光った、一条の光。

「まずは、あの光を探さなければ」
ソルエメラルドと対をなす、カオスエメラルド。
それを操ることのできる、守護者を探さなければ。

所々に見え隠れする、炎の眷属の配下達。

自分の能力を考えれば、分が悪いことは百も承知だ。
「それでも」
自分以外に、誰が自分の世界を救えるというのだろう。
自分以外に、誰がこの世界を変えられるというのだろう。

「…………ゆくぞ」

自分の中に眠る、破壊的な力を呼び起こす。
決して、無闇に破壊を行うまいと………封ずる願いを込めたマントを脱ぎ捨てた。