記憶の断片

を…。見せられる事がある。
それが何を意味しているのか、自分には到底見当もつかない。
それは、穏やかな平和な記憶であったり…。激しい戦争の記憶であったりもする。
はるか昔、俺の一族が大勢いた頃は…。この記憶を見て、共感したりだとか。意見を交わしたりだとか。そういうこともしたんだろうが…。

「俺に…見せたってしかたないだろうが。」
暖かな日の光を吸収しては、尚一層輝きを増す、その美しい緑の宝石に…一人こぼす。
意見を交わす相手も。共感してくれる相手も。
もうこの世界、どこを探したっていやしない。

「それでも…お前が」
時々こぼす、記憶の断片を……。俺に覚えていて欲しいって言うなら。

それも守護者としての役目なのだろうかと。
肩にかかる重みが増すような気がした。

これから開放されたいなんて、思ったことは一度としてないが。

軽やかに宙を舞い、大地を駆け抜けていく風を
羨ましいと・・・思ったことがあるのは…奥底にしまっておこう。

ああ、今度、あの風が暇をもてあましてつまらなそうにしていたら。
昔話を話して聞かせてやるのも悪くは無いかと思った。